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◆ 2017 年 3 月期は減収営業減益
2017年3月期の連結売上高は2,059億75百万円(前期比45億26百万円減)、営業利益は165億95百万円
(同10億96百万円減)、経常利益は156億84百万円(同19億39百万円減)、親会社株主に帰属する当期純利 益は114億50百万円(同5億50百万円増)となった。2016年末に買収し、当期より連結対象とした欧米3社の影 響としては、売上高が27億93百万円増加したが、営業利益は買収費用などの発生により11億9百万円減少し た。また、琳得科(天津)実業有限公司の清算損5億68百万円を特別損失に計上した。
リンテック単体と連結子会社の業績は、売上高については、単体が1,646億2百万円(前期比1億16百万円増)、 連結子会社が832億23百万円(同72億92百万円減)となった。営業利益については、単体が115億50百万円
(同15億85百万円増)、連結子会社が50億38百万円(同25億37百万円減)となった。
売上高については、単体ではアドバンストマテリアルズ事業部門とオプティカル材事業部門が堅調に推移した が、そのほかの事業部門は総じて減少した。連結子会社では、加工材事業部門は堅調に推移したが、中国やア セアン地域の景気減速や需要低迷の影響を受けたことや、円高による円貨換算差などにより減少した。なお、連 結ベースでの円高によるマイナス影響額が約68億円あった。営業利益については、単体の増減要因として、販売 数量の増加などで約3億円増、原燃料価格の下落で約33億円増、海外子会社向けを含む輸出外貨建て取引の 円高影響と販売単価の下落で約18億円減、固定費の増加で約2億円減があった。連結子会社では、売上高の減 少、買収費用の計上、円高による円貨換算差などで減少した。なお、連結ベースでの円高によるマイナス影響額 が約23億円あった。
事業セグメント別では、印刷材・産業工材関連の売上高は、印刷・情報材事業部門が550億94百万円(前期比 9億49百万円増)、産業工材事業部門が305億66百万円(同29億26百万円減)、合計で856億61百万円(同 19億77百万円減)となった。営業利益は16億72百万円(同11億12百万円減)となった。なお、当セグメントに は買収3社の業績が含まれている。事業部門別の売上高の概要は、印刷・情報材事業部門では、シール・ラベル 用粘着製品が国内では食品関連が低調となったものの、医薬・物流関連が堅調に推移し 、海外では中国やアセ アン地域において景気減速の影響を受けた。産業工材事業部門では、通販向け装置が好調であったものの、アジ ア新興国において景気減速の影響を受け、二輪を含む自動車用粘着製品やウインドーフィルムが低調に推移し た。
電子・光学関連は、海外売上高比率が高いことから円高によるマイナスの影響が大きく、売上高はアドバンスト マテリアルズ事業部門が430億32百万円(前期比6億80百万円減)、オプティカル材事業部門は401億72百万 円(同15億36百万円減)、合計で832億5百万円(同22億17百万円減)となった。営業利益は91億55百万円
(同14億7百万円減)となった。事業部門別の売上高の概要は、アドバンストマテリアルズ事業部門では、半導体 関連粘着テープ、半導体関連装置が第 2 四半期以降にスマートフォン用などの需要が回復し、前期並みとなった ほか、積層セラミックコンデンサ関連テープが秋口以降に需要が回復したものの、期の前半が不調であったため
7966 リンテック
西尾 弘之 (ニシオ ヒロユキ)
リンテック株式会社社長
新中期経営計画「LIP-2019」がスタート
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減少した。オプティカル材事業部門では、大型テレビ用などの需要低迷の影響で液晶ディスプレイ関連粘着製品 が低調に推移した。
洋紙・加工材関連の売上高は、洋紙事業部門が164億59百万円(前期比5億28百万円減)、加工材事業部 門は206億48百万円(同1億96百万円増)、合計で371億8百万円(同3億31百万円減)となった。営業利益 は原燃料価格下落の効果もあり、57億67百万円(同14億63百万円増)となった。事業部門別の売上高の概要 は、洋紙事業部門では、主力のカラー封筒用紙が低調に推移し、建材用紙や耐油紙なども減少した。加工材事業 部門では、炭素繊維複合材料用工程紙の航空機用が堅調に推移し、FPC カバーレイ用剥離紙や光学関連製品 用剥離フィルムも順調に推移した。
◆ 2018 年 3 月期は増収増益見込む
2018年3月期の連結売上高は2,500億円(前期比440億円増)、営業利益は200億円(同34億円増)、経常 利益は195億円(同38億円増)、親会社株主に帰属する当期純利益は135億円(同20億円増)と予想している。 売上高は単体で1,696億円(同50億円増)、連結子会社で1,263億円(同431億円増)と見ている。営業利益は単 体で123億円(同7億円増)、連結子会社で77億円(同27億円増)を見込んでいる。増減要因としては、単体では 販売数量の増加などで17億円増、原価低減効果で7億円増、原燃料価格の上昇で5億円減、固定費の増加で 12億円減、連結子会社では買収関連費用がなくなることで8億円増、販売数量の増加などで14億円増、買収3 社の利益増加で5億円増を見込む。
事業セグメント別では、印刷材・産業工材関連の売上高は、印刷・情報材事業部門で886億円(前期比335億円 増)、産業工材事業部門で366億円(同60億円増)、合計1,252億円(同395億円増)を計画しており、買収3社 による売上高の増加額は、印刷・情報材事業部門で311億円、産業工材事業部門で 45億円と見ている。営業利 益は 48 億円(同 31 億円増)を見込んでいる。電子・光学関連の売上高は、アドバンストマテリアルズ事業部門で 470億円(前期比40億円増)、オプティカル材事業部門で398億円(同4億円減)、合計868億円(同36億円増) を計画しており、営業利益は94億円(同3億円増)を見込んでいる。洋紙・加工材関連の売上高は、洋紙事業部門 で170億円(前期比5億円増)、加工材事業部門で210億円(同4億円増)、合計380億円(同9億円増)を計画 しており、営業利益は前期並みの58億円を見込んでいる。
2017年3月期の設備投資額は108億円(前期比24億円減)となっており、主な内容は三島工場での建物耐震 化および調成工程合理化工事、熊谷工場での剥離フィルム塗工設備および剥離紙塗工設備、龍野工場での粘着 紙・粘着フィルム塗工設備、平塚事業所再構築工事などである。減価償却費は75億円(同13億円減)、研究開発 費は前期並みの76億円となった。2018年3月期の設備投資額は、継続案件に加え、三島工場の剥離フィルム塗 工設備などで105億円を予定している。減価償却費は88億円、研究開発費は83億円の見通しとなっている。
2017年3月期の年間配当金は、前期比12円増配の1株当たり66円(連結配当性向41.6%)とした。2018年3 月期については、連結当期純利益予想 135 億円、1 株当たり当期純利益 187.11 円を前提に、年間 66 円(同 35.3%)を予定している。
◆新中期経営計画「 LIP-2019 」
2016年度(2017年3月期)を最終年度とした前中期経営計画「LIP-2016」では、「攻めの経営と間断なきイノベー ションで成長軌道を取り戻す」を基本方針に諸施策を推進したが、アジア新興国経済の成長鈍化や国内の個人消 費低迷などが業績に大きな影響を及ぼし、数値目標を達成することができなかった。
この4月にスタートした2019年度(2020年3月期)を最終年度とする3カ年の新中期経営計画「LIP-2019」では、 事業環境が不透明感を増す中、持続的な発展・成長を遂げていくためには、イノベーションとチャレンジの精神が 不可欠だと考え、基本方針を「イノベーションをさらに深化させ、新たな成長にチャレンジ」とした。重点テー マは、
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「地域戦略の強化」、「新たな価値の創造」、「企業体質の強靭化」、「持続可能な社会の実現に向けた取り組み 」 の4つである。
「地域戦略の強化」については、国内では市場が成熟化しつつある印刷材・産業工材、洋紙・加工材などの事業 領域において、QCD 強化によりシェア拡大を図るとともに、新市場・新需要を開拓する。アジア地域では、2015 年 にシンガポールに 設立した統括会社の機能と生産・販売会社の連携 を強化し、原材料の現地調達化、地域のニ ーズに見合った製品の立ち上げ、戦略的M&A を含む投資により、印刷材・産業工材事業の強化・拡大を図る。欧 米では、買収 3 社の技術力・製造力・販売チャンネルを最大限に活用し、リンテック製品の販売を強化するなど相 乗効果の早期発現を目指す。
「新たな価値の創造」については、2015年に完成させた研究開発本部の先端技術棟を最大限に活用し、新製品 投入のスピードアップを図るとともに、顧客の課題やニーズをいち早く察知して、新たな付加価値を持った差別化 製品を創出する。また、エレクトロニクス、光学、自動車、環境、エネルギー関連などの成長分野をターゲットに、市 場の変化を先取りした次世代製品の開発を積極的に行っていく。
「企業体質の強靭化」については、営業赤字に陥っている海外子会社の早期黒字化を図る。組織横断的な業務 改革では、これまで構築してきた情報システム基盤を有効活用し、間接部門を中心に業務効率の向上を図る。コ スト構造改革としては、原価低減活動をさらに強化するとともに、コスト意識を高めた製品の設計・開発、サプライ チェーンの最適化を目指す。
「持続可能な社会の実現に向けた取り組み」については、本業を通じて環境問題や人口問題などの社会的課題 の解決に寄与する事業活動を推進する。また、働き方改革と多様な人材の育成・活躍を促進し、生産性の向上を 図るとともに、より働きがいのある職場環境をつくることで、グループの持続的成長につなげていきたい。
◆売上高 2,700 億円、営業利益 250 億円を目指す
最終年度の主要数値目標は、売上高2,700億円、営業利益250億円、当期純利益175億円としており、売上高 営業利益率およびROEは9%以上を目指す。売上高は単体で1,834億円(2017年3月期対比188億円増)、連 結子会社で1,394億円(同562億円増)を計画している。営業利益は単体で143億円(同27億円増)、連結子会社 で107億円(同57億円増)を計画している。営業利益の増減要因については、単体では増益要因として販売数量 の増加や売上構成の改善で76億円、原価低減で21億円、一方、減益要因として、販売価格の下落で19億円、 原燃料価格の上昇で17億円、固定費の増加で34億円と見ており、トータルでは27億円の増益を見込んでいる。 また、連結子会社では、既存子会社が41億円増、買収3社が16億円増と見ており、トータルで57億円の増益を 見込んでいる。なお、買収3社ののれん償却費は年間34億円である。
事業セグメント別では、印刷材・産業工材関連の売上高は、印刷・情報材事業部門が955億円(2017年3月期 対比404億円増)、産業工材事業部門が415億円(同109億円増)、合計1,370億円(同513億円増)を計画して いる。それぞれ340億円と60億円が買収3社の増加分である。営業利益は74億円(同57億円増)を計画してお り、16億円が買収3社の増加分である。主な取り組みとして、印刷・情報材事業部門では、国内で顧客ニーズをい ち早く捉えた新製品開発、新規用途・新市場の開拓を積極的に行う。アジア地域では、イ ンドネシア、タイ 、中国
(蘇州)の生産拠点を最大限に生かし、地域のニーズを捉えた製品づくりに注力する。産業工材事業部門では、自 動車用粘着製品の拡販に加え、ウインドーフィルムの新製品開発を推進していく。
電子・光学関連の売上高は、アドバンストマテリアルズ事業部門が530億円(2017年3月期対比100億円増)、 オプティカル材事業部門が400億円(同2億円減)、合計930億円(同98億円増)、営業利益は116億円(同25 億円増)を計画している。主な取り組みとして、アドバンストマテリアルズ事業部門では、半導体関連粘着テープお よび装置で業界をリードする数多くの差別化製品やオンリーワン製品を有しており、積層セラミックコンデンサ関連 テープも含め、新技術・新プロセス・新材料を追及し続けることによって、さらなるシェア拡大を図る。オプティカル
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材事業部門では、性能や品質、コスト面における競争力を強化し、大型テレビやスマートフォンなどの需要増およ び有機ELパネルの需要に対応していく。
洋紙・加工材関連の売上高は、洋紙事業部門が180億円(2017年3月期対比15億円増)、加工材事業部門が 220億円(同14億円増)、合計400億円(同29億円増)、営業利益は60億円(同2億円増)を計画している。主な 取り組みとして、洋紙事業部門では、機能性を付与した特殊紙や環境対応製品の開発を積極的に推進するととも に、差別化製品である耐油耐水紙を国内外で拡販していく。加工材事業部門では、剥離紙・工程紙の性能・品質・ コスト・環境対応などの競争力を高め、シェア拡大を図る。炭素繊維複合材料用工程紙については、今後期待され る航空機用の需要増に対応すべく、塗工機の増設を開始した。
設備投資額は3年間で313億円を計画しており、事業拡大と高収益化を視野に入れたQCD強化のための設備 導入や統廃合を推進する。減価償却費は271億円、研究開発費は255億円を計画している。
◆買収 3 社の今後の事業展開
最後に昨年末に買収した欧米3社の買収目的と今後の事業展開について説明する。なお、買収3社との相乗 効果は、「LIP-2019」の定量計画に織り込んでいない。
米国のMACtac社は、世界の印刷用ラベル素材市場の約3割を占める北米市場において確固たる地位を築い ており、北米市場への本格参入を目的に買収した。3つの工場と8カ所の倉庫・配送拠点を有する同社は、北米の 同業界の中でも、いち早くクイックデリバリー体制を実現したこともあって、北米全域で1,000社を超える顧客を有し ており、ホットメルト粘着剤などの独自処方や高速塗工技術に強みを持っている。「LIP-2019」では、同社の販売チ ャンネルを活用し、当社の高機能粘着フィルム製品を北米地域で積極展開するとともに、同社の価格競争力に優 れた汎用粘着製品を主にアジア地域で展開していく。
米国のVDI社は、当社米国子会社のマディコ社が高機能ウインドーフィルムの基材として使用している、紫外線 や近赤外線を遮断する機能性フィルムを製造しており、プラスチックフィルムに多種多様な金属や酸化物を積層す るメタライジング技術の獲得を目的に買収した。「LIP-2019」では、このメタライジング技術でウインドーフィルム事 業の展開を加速するとともに、新たな分野での事業展開につなげていく。
英国のLintec Graphic Films社は、2010年から現在の社名に変更して当社の高機能フィルム粘着製品や窓用 装飾フィルムを欧州全域で販売しており、欧州市場における数多くの知見と優れた製品提案力・営業力の獲得を 目的に買収した。「LIP-2019」では、オランダの販売拠点との連携を強化することで、自動車、工業、電機市場に向 けて販売活動を活性化していく。
(平成29年5月15日・東京)
*当日の説明会資料は以下のHPアドレスから見ることができます。 http://www.lintec.co.jp/ir/library/presentation.html